遠隔からの火花放電による汎用プラスチックの新しい合成方法を開発

代表者 : 後藤 博正  

ポリスチレンなどの汎用高分子(プラスチック)の合成において、テスラコイル(高電圧・高周波発生装置)からの遠隔火花放電により、従来の触媒や重合開始剤を使わずに反応が進行するラジカル重合法を開発しました。このような方法は、合成高分子化学の分野では初めてです。
ポリスチレンやアクリル樹脂などの高分子は、食品容器や梱包材、保温ケースなどさまざまなプラスチック製品として使われています。これらの高分子の合成には、従来、金属触媒やラジカル重合開始剤が用いられています

本研究グループは、今までに、導電性高分子について、さまざまな重合方法の開発を行ってきましたが、今回、本研究では、高分子の原料であるモノマーに対して、テスラコイル(高電圧・高周波発生装置)を用いて遠隔からの火花放電処理を行い、モノマーラジカルを発生させて、これを重合開始剤として高分子を合成する方法を開発しました。テスラコイルは対向電極を設置しなくても強力な放電を行うことができるため、反応容器の外部から火花放電処理を行うことができます。この方法により、食品容器などに多用されるポリスチレンや、ポリメチルメタクリレート(アクリル)などを高純度で合成することに成功しました。

さらに、共役系高分子に同様の火花放電処理を行い、これにより発生した「ソリトン」を開始剤として高分子を合成する方法も見いだしました。このような方法は合成高分子化学の分野では初めてであり、電磁波を用いた物質合成の可能性を示唆しています。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学 数理物質系
後藤 博正 准教授
掲載論文
【題名】 Spark Discharge-Initiated Radical Polymerization
(火花放電開始ラジカル重合) 【掲載誌】 Next Materials 【DOI】 10.1016/j.nxmate.2024.100326