高齢発症関節リウマチにおける制御性T細胞の機能低下の原因を発見

代表者 : 松本 功  

高齢で発症する関節リウマチについて、免疫応答を抑制する制御性T細胞が増加しているにもかかわらず、関節炎が十分に抑制されず、この細胞の関節炎環境下での代謝活性変化、抑制能低下、PD-1発現亢進を示し、I型インターフェロンシグナル亢進がその機能不全に寄与していることを明らかにしました。
関節リウマチ(RA)は多関節の滑膜炎を特徴とする自己免疫疾患で、制御性T細胞(Treg)の機能不全が病態に関連することが知られています。近年、高齢発症関節リウマチ患者(EORA)が増加しており、他臓器の炎症や、強力な治療に伴う感染症や癌の合併が問題となっていますが、RA患者の年齢による機能変化に関しては明らかにされていませんでした。

本研究では、RA患者におけるT細胞に着目して解析したところ、EORA患者のTregは若年発症RA(YORA)患者と比較して割合は増加しているものの、その活性が低下していることを見いだしました。またRNAシークエンス解析では、健常人では年齢によるクラスターの差異が認められないものの、RA患者Tregでは若年と高齢発症でクラスターの違いが明らかになりました。関節炎モデルマウスを用いた分析では、高齢発症関節炎マウスのTregのみで、抑制機能および酸素消費率の低下が観察されました。さらに、EORA患者と高齢関節炎マウスの両者で、TregのI型インターフェロン(IFN)シグナル伝達が亢進されており、IFN-βは高齢Tregの抑制機能を低下させました。これらの結果は、高齢TregにおけるIFNシグナルの過剰亢進は関節炎の環境下のみで誘発されることから、Tregの機能低下と関連し、EORAに関与していることが分かりました。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学医学医療系
松本 功 教授
西山 泰平 医学学位プログラム(一貫制博士課程)4年次
掲載論文
【題名】 Mechanisms of age-related Treg dysfunction in an arthritic environment
(関節炎環境下での年齢に関連する制御性T細胞機能不全のメカニズム) 【掲載誌】 Clinical Immunology 【DOI】 10.1016/j.clim.2024.110337