リモート労働者は出社労働者と比べて、身体活動が少なく、座位時間が長く、健康リスクが高まります。リモート労働者を対象に、身体活動を促進する多要素プログラムを提供し、その効果を調べたところ、対照群との差は見られないものの、身体活動量が有意に増加し、プログラムの実行可能性が示されました。
新型コロナウイルス感染症の拡大期には、勤務形態としてリモート勤務が普及し、オフィス労働者(デスクワーク従事者)の身体活動に悪影響を与えました。先行研究によれば、リモート労働者は出社労働者と比べて、身体活動が少なく、座位時間が長く、健康リスクが高まっている状態です。しかしながら、リモート労働者に対する身体活動促進対策は十分ではありません。そこで、本研究では、リモート労働者を対象に、身体活動を促進するための多要素プログラムを提供し、その効果を対照群と比較するパイロットランダム化比較試験を実施しました。
リモート労働者52名を対象に、介入群には、8週間の多要素身体活動促進プログラムとして、身体活動を促進するための個人戦略(講義、印刷物、目標設定、フィードバック、ポスター)、社会文化的環境戦略(チーム構築、雰囲気づくり)、組織的戦略(役員によるメッセージ)を提供しました。一方、対照群には最小限の介入としてポスターを提供しました。その結果、8週間を通して、介入群と対照群の身体活動量の変化に有意差は認められませんでした。介入群では低強度身体活動が14分/日、勤務日の中高強度身体活動時間が9.4分/日、歩数が984歩/日、それぞれ有意に増加し、対照群においても、勤務日の歩数が895歩/日、有意に増加しました。
以上の結果から、多要素身体活動促進プログラムについて、リモート労働者における実行可能性が示唆されました。本研究の成果は、日本におけるリモート労働者の身体活動を促進するための対策づくりに役立ちます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学体育系
中田 由夫 教授
MS&ADインターリスク総研株式会社
森本 真弘 リスクコンサルティング本部企画室 部長
掲載論文
【題名】 Effectiveness of a multi-component intervention to promote physical activity among Japanese remote workers: a pilot open-label randomized controlled trial
(リモート労働者の身体活動を促進する多要素プログラムの有効性―パイロットランダム化比較試験―) 【掲載誌】 Journal of Occupational Health 【DOI】 10.1093/joccuh/uiae052