中学生女子ハンドボールにおいて、小さくて握りやすい素材の新しいボールを導入した試合では、従来のボールよりも攻撃成功率が高いことが分かりました。一方、ゴールキーパーのセーブ率は低かったことから、ゴールキーパー向けの技術や戦術的な指導の必要性が示されました。
ハンドボールでは、ボールを握ってプレーすることが重要であり、ボールを握りやすくするためにプレーヤーは指に松やにを付けます。しかし、そのことによって施設が汚れたりすることから、多くの体育館では松やにの使用が禁止されています。そこで、国際ハンドボール連盟は、松やにを使用しなくても握りやすい素材を用いたボールを開発しました。日本ハンドボール協会は、2020年、中学生女子の大会使用球の規程を変更し、このボールに対して、さらにサイズを小さく、軽くした新しいボールを導入しました。
本研究では、ボールの変更が、ゲームパフォーマンスに与えた影響を分析しました。その結果、新しいボールの導入によって、バックコートプレーヤーがより強力なディスタンスシュート(ゴールキーパーとシューターの間に防御者がいる状況でのシュート)を打てるようになり、それにより、バックコートプレーヤーを守るのに効果的な、より深い(積極的な)防御戦術が採用されるようになったと推察されました。また、シュートのコントロールが向上し、プレーヤーがゴールの上段を狙う傾向が高まったことが示唆されました。一方、ゴールキーパーのセーブ率は低く、特に上段のシュートコースに対するゴールキーパー向けの技術・戦術的な指導の必要性が示されました。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学体育系
中山 紗織 助教
牧平 佑成(研究当時:体育学学位プログラム博士前期課程)
掲載論文
【題名】 Impact of a ball regulation change on game performance and shooting play in Japanese U-15 girls’ handball.
(ボール規則の変更が日本のU-15女子ハンドボールのゲームパフォーマンスとシュートプレーに与える影響) 【掲載誌】 Perceptual and Motor Skills 【DOI】 10.1177/00315125241274215