生活習慣の改善支援として特定保健指導を受けた中年勤労者のデータを機械学習により分析し、運動習慣の獲得に影響する要因を探索しました。その結果、運動習慣の獲得に好影響を及ぼす要因として「生活習慣改善に対する行動変容ステージが高いこと」の重要度が最も高いことが分かりました。
身体不活動は、高血圧、喫煙、高血糖に続く4番目の死亡リスク因子であることが分かっており、健康の保持・増進のためには運動習慣を獲得することが重要です。日本では、運動習慣を含めた生活習慣の改善支援として特定保健指導が行われていますが、より効率的な保健指導を展開するために、保健指導の効果に影響する要因(対象者の特性や生活習慣等)を特定することが重要です。本研究では、これまでに特定保健指導(動機付け支援)を受けた中年勤労者のデータを機械学習により分析し、運動習慣の獲得に影響する要因を探索するとともに、各要因の重要度について検討しました。
健康保険組合等の保険者が2017~2018年の保健事業で取得したデータを二次利用し、機械学習を用いて分析した結果、運動習慣の獲得に好影響を及ぼす要因として、「生活習慣改善に対する行動変容ステージが高いこと」の重要度が最も高く、次いで「身体活動レベルが高いこと」、「HDLコレステロール値が基準範囲内であること」という結果が得られました。一方で、「1日3合以上の飲酒」は運動習慣の獲得に悪影響を及ぼす可能性が示唆されました。
本研究により、特定保健指導の動機付け支援を受けた中年勤労者が有する特性やライフスタイルの中には、運動習慣の獲得に好影響を及ぼす要因とそうでない要因があることが明らかになりました。今後、これらの要因を考慮した支援策を構築することで、より効率的な保健指導事業の展開につながると期待されます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学体育系
中田 由夫 教授
女子栄養大学栄養学部
津下 一代 特任教授
名古屋大学医学部附属病院
尾上 剛史 病院講師
十文字学園女子大学人間生活学部
若葉 京良 講師
掲載論文
【題名】 Factors associated with acquiring exercise habits through health guidance for metabolic syndrome among middle-aged Japanese workers: A machine learning approach
(メタボリックシンドローム該当者向けの健康指導を受けた中高齢勤労者における運動習慣の獲得に関連する要因:機械学習アプローチ) 【掲載誌】 Preventive Medicine Reports 【DOI】 10.1016/j.pmedr.2024.102915