微量元素分析による男性不妊症の新しい評価方法を発見

代表者 : 古城 公佑  

男性不妊患者の精液と血清内の微量元素濃度を測定、分類する評価方法を開発し、リンとヒ素の濃度が低く、他の微量元素の濃度が高いグループの妊娠率が高いことを確認しました。これにより、本手法が、従来の精子の濃度や運動率だけに頼らない、新たな不妊症評価手法となる可能性が示されました。
少子化が社会問題となっている昨今、男性側を原因とする不妊で悩む人が、日本でも10人に1人はいると言われています。その原因としてよく知られているのは、精子の数が少ない、動きが悪いなど、精子をつくる機能に問題がある「造精機能障害」です。これらは不妊治療クリニックなどで精液検査をすることで判明します。しかし、精液検査の結果は、同じ人でも日によって変動が激しい上、精子濃度や運動率だけでは説明できないケースも多く存在します。そのため、多くの男性が、原因がはっきりしないまま不妊に悩んでいるのが現状です。

本研究では、精漿(精液の液体部分)および血清中の微量元素に着目し、新たな不妊症の評価手法を開発しました。精漿と血清における20種類の微量元素の濃度を測定し、機械学習による分類を試みたところ、リンとヒ素の濃度が低く、他の微量元素の濃度が高いグループにおいて、不妊治療開始から1年以内に自然妊娠が成立した割合が他のグループよりも高いことを確認し、これにより、今回開発した不妊症の評価手法が有効である可能性が示されました。本研究成果は、微量元素分析を用いた新しい不妊症治療法の開発や妊娠率向上に資すると期待できます。

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プレスリリース
研究代表者
筑波大学附属病院
古城 公佑 病院講師

株式会社レナテック
清水 拓弥 開発研究部 部長
掲載論文
【題名】 A new clustering model based on the seminal plasma/serum ratios of multiple trace element concentrations in male patients with subfertility.
(不妊症の男性患者の複数の微量元素濃度の精漿/血清比に基づく新しいクラスタリングモデル) 【掲載誌】 Reproductive Medicine and Biology 【DOI】 10.1002/rmb2.12584