アレルギー感作に関連する遺伝子領域を発見

アレルギー感作に関連する遺伝子領域(遺伝子多型)を日本人集団と白人集団の大規模ゲノム解析で発見しました。日本人集団の感作関連遺伝子多型や両集団共通の遺伝子多型などが明確になり、多感作に関連する遺伝子多型も初めて特定されました。アレルギー疾患の予防や治療につながる成果です。
私たちは毎日花粉、食物、家のホコリの中のダニなどさまざまな環境アレルゲン(抗原)にさらされています。一部の人たちの体内では、ありふれたそれらの環境アレルゲンを異物とみなす免疫機能が働き、免疫グロブリンE(IgE)というアレルギー関連抗体が産生されます。このように、ありふれた環境アレルゲンに特異的なIgE抗体が産生された状態をアレルギー感作と言います。アレルギー疾患の発症前に感作が起こることが多く、アレルギー疾患の評価や予防法の検討において重要な指標と考えられています。

本研究では、筑波大学および東北メディカル・メガバンクで収集された日本人一般集団4万6602人のゲノム(全遺伝情報)データを用い、個々人で異なる遺伝子領域(遺伝子多型)とその人の形質(病気の有無や体形など)との関連を網羅的に解析する全ゲノム関連解析を実施しました。さらに2万5032人の白人集団を対象に全ゲノム関連解析を実施して得られたデータと合わせて解析し、アレルギー感作に関連する遺伝子多型を同定しました。その結果、日本人集団においては18の感作関連遺伝子多型、白人と日本人を統合した解析では23の関連する遺伝子多型が明らかになりました。また、世界で初めて、複数のアレルゲンに感作される多感作についても全ゲノム関連解析を実施し、関連する八つの遺伝子多型を同定しました。

本研究チームはこれらのデータの詳細解析から、アトピー性皮膚炎の発症については、喘息・アレルギー性鼻炎・花粉症よりアレルギー感作の遺伝的素因の影響が小さいことも明らかにしました。

今回の研究成果は、アレルギー疾患に関する分子メカニズムを理解するための重要な一歩となり、アレルギー疾患の予防や治療法の開発に貢献することが期待されます。

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プレスリリース
研究代表者
筑波大学医学医療系遺伝医学
野口 恵美子 教授

東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター 分子遺伝学研究部
廣田 朝光 准教授
掲載論文
【題名】 A genome-wide meta-analysis reveals shared and population-specific variants for allergic sensitization
(ゲノムワイドなメタアナリシスにより、アレルギー感作性に関する共有バリアントと集団特異的バリアント) 【掲載誌】 Journal of Allergy and Clinical Immunoloty 【DOI】 10.1016/j.jaci.2024.11.033