ネットでの情報収集はワクチンに対する信念を強め、接種行動に影響する

代表者 : 藤 桂  

COVID-19ワクチン接種プログラム初期には、ネット上でさまざまな情報が発信されており、それらとの接触が、ワクチンの接種意向に影響を及ぼすことが分かりました。また、時期の経過とともに、人々はワクチンに対する自身の信念に合致する情報を閲覧し、さらに信念を強めていたことも解明しました。
2020年にパンデミック宣言された新型コロナウイルス(COVID-19)に対する日本でのワクチン接種プログラムは、2021年から始まりました。当時、対面での行動が制限されていたこともあり、インターネットが主な情報源となっていました。しかし、さまざまな情報があふれる中、どのような情報がワクチン接種意向に影響を与えるかは明らかになっていませんでした。そこで本研究では、接種プログラム開始直後から6か月間、3波に及ぶ縦断調査を行い、人々がどのような情報に触れ、また情報との接触がワクチン接種意向に影響を及ぼすかを分析しました。

その結果、当時のワクチンに関するネット上の情報は、①ワクチンに関する専門性の高い情報(専門性情報)、②自身がいつどこで接種できるのかという可用性に関する情報(可用性情報)、③海外・国内での普及状況に関する情報(普及性情報)、の3種に分類されました。このうち、専門性および普及性情報は、ワクチンに対する否定的な信念を強め、接種意向を低めたのに対し、可用性情報はワクチンへの肯定的な信念を強め、接種意向を高めていました。

また、情報収集によりワクチンへの肯定的な信念や接種意向が高まるほど、その後も可用性情報を収集しようとしやすく、それによりさらにワクチンへの肯定的信念が高まっていました。つまり、情報に触れることでワクチンへの信念が強まり、その信念に合致する内容の情報収集が促され、そのことがまた信念を強める…といった循環的な影響過程の存在も示唆されました。

PDF資料
プレスリリース
研究代表者
筑波大学人間系
藤 桂 准教授
井上 左奈恵 カウンセリング科学学位プログラム 博士後期課程1年次
掲載論文
【題名】 How did internet information influence COVID-19 vaccination? The cyclical influence of the internet information, beliefs, attitudes, and intentions toward vaccines from a three-wave longitudinal study
(インターネット情報はCOVID-19ワクチン接種にどのように影響したのか?ワクチンに対するインターネット情報、信念、態度、接種意向の循環的影響 -3波の縦断研究より) 【掲載誌】 Technology in Society 【DOI】 10.1016/j.techsoc.2024.102776