導入進む再エネシステム 災害時の強靭性評価法開発

代表者 : 秋元 祐太朗  

気候変動対策として、温室効果ガスを排出しない太陽光発電など再生可能エネルギーシステムの導入が進んでいる。 これらの設備は、従来の電力会社による大規模な発電設備とは異なり、電力を利用する建物やその近くに設置される分散型のことが多い。これら分散型電源を備えた建物は、大地震や豪雨などで送電線が寸断されても、電力供給を続ける、あるいは停電からの復帰が早い特徴がある。 このため、災害時の対策拠点や避難所に再生可能エネルギーシステムが導入されつつある。しかし、そのような個別の建物について、災害に対するレジリエンスを評価する手法の開発は進んでいなかった。 レジリエンスとは、非常時にどれだけ柔軟に対処できるかという強きょうじん靭性のことだ。エネルギー工学では、電力需要への対応力や回復力という意味合いを持つ。 秋元祐太朗助教(シス情系)らの研究チームは、再生可能エネルギーシステムの災害時におけるレジリエンスの定量的な評価方法を開発した。 エネルギーレジリエンスの評価には、停電時間やその回数など考慮すべき多様な側面がある。 秋元助教はそこで、レジリエンスを分析する指標として①冗長性(電力供給可能な時間の長さ)②余力(非常時において電力供給可能な時間に供給量が需要量を上回った総量)③供給不足量(非常時において供給不足が発生している時間に供給量が需要量を下回った総量)の三つを設定した。 そして、太陽光発電と蓄電池を備えた大分県のゼロエミッションビル(年間の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにできる建物)が停電に陥った際の、エネルギーシステムのレジリエンスを、これらの指標を基に評価した。 評価では、特定の1週間について、晴天の日と曇天の日に分け、それぞれ午前1時、午前7時、正午、午後5時に停電が発生した場合の、システムのエネルギー量の時系列変化をシミュレーションし、それぞれの指標を計算した。 その結果、このビルの場合は、午前1時や午後5時に停電が起きた場合は、蓄電池からの放電ができなくなることが分かった。一方で、停電発生時間が正午など晴天時の昼間である場合は、太陽光発電が機能し、蓄電池への充電もできて、レジリエンスが最も高くなると評価できた。 このような評価手法が確立できれば、避難所などの建物ごとに有用なシステムやその運用方法が検討できるようになる。 秋元助教は「今後は1年間継続した場合など、さまざまなパターンのシミュレーションを進め、誰もが分かりやすい指標を作成したい。そして、家庭や自治体における太陽光発電など再生可能エネルギーの導入促進につなげたい」と話した。(山本貴世=国際総合学類3年)