高詳細な遠赤外線全天画像データを公開~赤外線天文衛星「あかり」の新しい観測データを研究者が利用可能に

2015/01/15 

遠赤外線は、星・惑星系誕生の過程を知るために鍵となる波長帯です。星を作る素となる星間物質(星の間にあるガスやダスト)の分布を知ることができ、その内部で星が生まれる様子をくわしく調べることができるからです。

東京大学・筑波大学・東北大学などの研究グループは、赤外線天文衛星「あかり」のデータから、全天の遠赤外線画像データを作成しました。完成したデータを、世界中の研究者が利用できるようにインターネットを通じて公開しました。今回完成したデータは、これまで利用されてきた遠赤外線全天画像と比較して解像度を4~5倍向上させ、観測波長もより長い波長に広げています。

この画像データは、星間物質の温度や分布を正確に測定したり、星間物質から星が作られ始める様子をくわしく調べたり、星間物質の背後に埋もれた宇宙背景放射の強さの分布を正確に測定するなど、天文学の非常に広い範囲の研究に貢献すると期待されます。

 

 

図: 「あかり」の観測した全天の遠赤外線画像。青:90マイクロメートル、赤:140マイクロメートルの2色合成で示す。中央に水平に伸びるのが天の川。銀河系の中心領域を画像の中心にした360°の範囲を示す。Sの字状に薄く見えるのは、太陽系内の塵による光。「あかり」は全天の99%以上の領域を観測し、詳細な全天の遠赤外線地図を描き出した。観測されなかった残り1%未満の領域が画像中に黒いスジ状に見られる。色の青いほどより温かい星間物質、赤いほどより冷たい星間物質の存在を示す。星間物質が温かい領域ほど、そこでより多くの新しい星が生まれつつあることを示す。