偏光面を磁場により回転させるファラデー回転現象と、導電性高分子の電気化学的酸化と還元を組み合わせ、磁場中において低電圧で導電性高分子ポリチオフェンの光学回転を制御する新しい手法を発見しました。本手法は、磁場検出素子や光通信デバイスなどに用いる新しい素子への応用が期待されます。
導電性高分子は、導電性以外にも多様な特性を持ち、発光素子や電磁波の遮断材料、防錆材料などへの応用研究が行われてきました。その特性の一つに、電気化学的な酸化によりドーピングに伴って発生するポーラロン(電気伝導を担う仮想的粒子)の発生があります。これにより、光学的特性や磁気的性質が大きく変わります。本研究では、磁場中で光学不活性な物質に磁場に平行な方向に直線偏光を透過させると光学回転が生じる「ファラデー回転」という現象に着目しました。
本研究グループは、これまでに、液晶中で高分子を合成し、さまざまな光学活性を持つ導電性高分子を合成してきました。今回、光学不活性なポリチオフェンを合成し、ファラデー配置と呼ばれる形の磁場中において、1.5V程度の定電圧でポリチオフェンの電気化学的酸化-還元(ドープ-脱ドープ)を行いポーラロンの状態を変化させることにより、簡便に光学回転面を制御できる手法を見いだしました。本手法は、磁場検出素子や光通信デバイスなどに用いる新しい素子開発への応用が期待されます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学数理物質系
後藤 博正 准教授
宮下 椋 応用理工学学位プログラム(博士課程)3年次:研究当時
掲載論文
【題名】 Electrochemical Faraday Effect of a Conductive Polymer 【掲載誌】 Molecular Crystals and Liquid Crystals 【DOI】 10.1080/15421406.2025.2548702