弾幕コメントが消費者行動に影響 動画分析で購買意欲との関連示す

代表者 : 吉田 光男  

SNS(ネット交流サービス)や動画共有サービスなどのソーシャルメディアの普及は人々の交流方法を一変させた。 その中でも、テキスト情報を通じて共有される感情が、ユーザーの行動に影響を及ぼす事例が注目されている。例えば、テスラ社の最高経営責任者、イーロン・マスク氏が暗号資産について肯定的なツイートをしたところ、その暗号資産の価格が高騰したケースなどがある。だが、こうした事例の分析は、X(旧ツイッター)など、投稿と反応に時間差があるものが中心だった。 吉田光男准教授(ビジネス系)、王巧さん(リスクP後期2年)らの研究チームは、動画と視聴者のコメントがリアルタイムで同期する中国の動画プラットフォーム「bilibili」に投稿された弾幕コメント(動画再生中の画面上に視聴者のコメントがリアルタイムで流れる機能)を分析し、多くの視聴者の行動が弾幕コメントに含まれる感情と関連していることを突き止めた。 対象とした動画は、日本の自動車メーカーが提供した車を中国のインフルエンサーが活用するというもの。公開後30日間に投稿された5万件以上の弾幕コメントを、投稿時刻や動画内の特定の位置を示す再生タイムスタンプなどの情報とともに収集した。 こうして集めたコメントを、テキストに含まれる感情を自動判定するソフトウェアを使って分類し、視聴者が示す行動パターンと感情との関係などを検証した。 その結果、多くの視聴者が、他者のコメントを模倣して自分も投稿する行動をとっていることが分かった。特に、動画で扱われている商品名を含むコメントなどは、関連吉田光男准教授弾幕コメントが消費者行動に影響する場面が動画に登場するタイミングに集中する傾向があった。これは、視聴者が映像コンテンツと弾幕コメントの両方から影響を受け、感情を共有し、同調しているのではないかと考えられた。 また、動画コンテンツへの肯定的な態度は、配信者や商品への肯定的な態度を生み出し、視聴者の購買意欲と関連することも明らかになった。 これは、ソーシャルメディア上に示された個人の感情が、具体的な消費情報にどうつながっていくのかを示す、重要な知見だという。 一方、ユーザーが自身の行動を繰り返す「自己模倣」については、行動の種類によって、感情の影響が異なっていた。例えば、コメントを繰り返す自己模倣をするユーザーは、商品に肯定的な感情を抱く傾向が強かった。ところが、動画を繰り返し視聴する行動と感情の間には、明確な関係は見られなかった。 王さんは、「感情表現が自己や他者の行動に影響することが明らかになった。今後は、これを応用し、ネット上のいじめや誹ひ ぼ う謗中傷をなくす方法につなげたい」と語った。 また、吉田准教授は「動画の視聴が自分だけでなく、他の視聴者にどう影響するかを解析した点に独自性がある。マーケティングの戦略立案などにも貢献するはずだ」と今後を展望した。(吉田花=日本語・日本文化学類1年)