水中ドルフィンキックは、両足をそろえ、イルカのように体を滑らかに上下にしならせながら進む潜水泳法だ。水泳競技では自由形やバタフライのスタートとターンの後、水中から浮上する際に使われ、その速度が勝敗の行方を左右する。 だが、人間がイルカのように泳ぐことは簡単ではない。そもそも、どの関節をいつ、どれくらい動かしたら速く泳げるのか、腕や脚など体のどの部位が協調して動いているのか、などはこれまで分かっていなかった。 そこで、山川啓介助教(体育系)らの研究チームは、筑波大水泳部の選手31人を対象に水中ドルフィンキックの動作解析を実施し、速く泳げる選手に共通する体の使い方の解明に挑んだ。 その結果、速く泳げる選手は、下肢を蹴り下げる際に肩関節を前方に大きく伸ばし、腕をほぼ水平に保つことで、上半身を細くまっすぐに維持していることが分かった。一方、下肢を蹴り上げる際には、体幹の腹部側を丸める動きをしていた。 また、運動学シナジー解析= =と呼ばれる手法を使い、ドルフィンキック時に体のどの関節が協調して動いているかを調べたところ、「すねと足首」と「太もも、体幹、腕」という二つの協調パターンが見つかった。 特に二つ目の協調パターンでは、速く泳げる選手ほど、太ももと体幹、腕がよく連動し、脚部が大きく動いても上半身を一直線に保つことができていた。これにより、水から受ける抵抗が少なくなると考えられた。 更に、これら二つの協調パターンで、水中ドルフィンキックの動作を99%以上説明できることも分かったという。 これらの発見の基となったデータは、選手たちが水中ドルフィンキックを行ったプール側面の水中窓の前にビデオカメラを置き、撮影した映像から、腕、体幹、脚部の計7カ所に付けた目印の位置情報をコンピューターで解析して取得した。 山川助教によれば、運動学シナジー解析を用い、水泳の動作を構成する関節の協調パターンを特定した研究は、これまでなかったという。 山川助教は現在、今回の手法を用いたバタフライの泳法解析に取り組んでいる。「こうした手法を動作解析に幅広く適用することで、指導者の経験に頼った指導ではなく、客観的な根拠を持った指導が可能となる。今後は、初心者の上達過程などについても調べたい」と今後の展望を語った。 運動学シナジー解析=人間の筋肉や関節は独立してさまざまな動きをすることができる。しかし、実際には、それぞれの動きが個別に制御されるのではなく、一定の関係(シナジー)をもち、協調して動いている。それらのうち、関節の運動で構成されるシナジーを解析する手法のこと。(望月柚那=比較文化学類1年)__
ドルフィンキックの動作を解明 肩関節と体幹の協調が速さのコツ
代表者 : 山川 啓介