中部山岳地域で近年確認が相次ぐカバノキ属のチョウセンミネバリは、中国大陸のものと同種であることが遺伝情報から推定されました。最終氷期最盛期には日本列島に広く分布していましたが、その後の温暖化で分布が縮小したと考えられます。また、近縁種のダケカンバと区別する方法も明示しました。
近年、カバノキ属の落葉高木チョウセンミネバリの林が中部山岳地域で相次いで確認されています。近縁種のダケカンバなどと混同されやすいことなどから、チョウセンミネバリの存在は国内で広く認識されてきませんでしたが、現在では日本列島の森林形成史の鍵を握る遺存種の一種と考えられるようになりました。しかし、チョウセンミネバリが属するカバノキ属は、自生環境下でも種間交雑が頻繁に生じており、同種とされていた個体が別種と判別される事例もしばしば起きています。このため、遺伝情報を用いた種区分の検証が重要となっていました。また、このような集団遺伝学的解析を行うことにより、日本国内の孤立したチョウセンミネバリ林がどのように大陸の集団から分化し、成立したかの推定も可能となります。
本研究チームは今回、中国のチョウセンミネバリや近縁種と日本国内で確認されたチョウセンミネバリ12集団の系統関係や遺伝的多様性や遺伝的な違いの指標等を計算し、日本のチョウセンミネバリがたどってきた歴史を推定しました。系統樹推定の結果、日本の個体と中国のチョウセンミネバリは同一のクラスターとなったことから、系統的に同種であることが推定されました。また、日本のチョウセンミネバリ集団は遺伝的に互いに類似しており、集団サイズの縮小を経験したことが示唆されました。これらは、先行研究と同じく、同種が最終氷期最寒冷期には日本列島に広く分布していたが、現在にかけて分布が縮小したというシナリオを支持しました。また、チョウセンミネバリと類似する近縁種ダケカンバは、葉の側脈の数と倍数性で明確に区別できることも示すことができました。
チョウセンミネバリは、これまで考えられてきたよりも分布を多く持ち、日本の冷温帯林の主要な構成種であることが想定されます。本研究の成果により、日本の冷温帯林の成立過程の推定や、チョウセンミネバリの分布の全容解明、基礎的な生態的情報の研究に役立つことが期待されます。
PDF資料
プレスリリース
研究代表者
筑波大学生命環境系
相原 隆貴 研究員
森林総合研究所多摩森林科学園 教育的資源研究グループ
設樂 拓人 主任研究員
掲載論文
- 【題名】
- Phylogenetic and population genetic analysis decipher the taxonomic consistency on cryptic Betula costata Trautv. (Betulaceae) populations in Japan and the process on its divergence and isolation
(系統・集団遺伝学的解析により推定された日本のチョウセンミネバリ隔離集団の種区分とその分化・孤立化の過程) - 【掲載誌】
- Plant Species Biology
- 【DOI】
- 10.1111/1442-1984.70057
関連リンク
生命環境系