初期宇宙の銀河から中性酸素の輝線を初検出 ―アルマ望遠鏡で拓く「星の材料」観測―

代表者 : 橋本 拓也  

千葉大学先進科学センターの札本佳伸特任助教、大栗真宗教授、早稲田大学の井上昭雄教授、筑波大学の橋本拓也助教、広島大学の稲見華恵准教授らの国際研究チームは、アルマ望遠鏡注1)を用いて、宇宙誕生から約7億〜8億年後の銀河4天体から、中性酸素が放つ輝線である「[O I] 145㎛(マイクロメートル)」注2)の検出に成功しました。これは、典型的な星形成銀河の冷たい中性ガス注3)からの直接的な信号としては、これまでで最も遠方の検出例となります。中性ガスは星の直接の材料でありながら、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)注4)など可視・近赤外線の望遠鏡では捉えにくいため、アルマ望遠鏡ならではの観測です。今回の研究成果は、初期宇宙の銀河で星がどのように生まれ育ったかを解明するうえで、新たな観測の窓を開くものです。本研究成果は、2026年6月15日(米国東部時間)に学術誌Astrophysical Journal で公開されました。(論文はこちら:10.3847/1538-4357/ae5bad )
■研究の背景
図:ビッグバンから約 7 億年後の宇宙に存在する銀河
A1689-zD1(背景)、とアルマ望遠鏡による観測から検出さ
れた中性酸素からの輝線(等高線およびスペクトル)
星は、銀河の中で水素原子・分子などからなる「中性ガス」が冷えて集まることで生まれるため、初期
宇宙において銀河がどのように作られるのかを理解するには、星の直接の材料である中性ガスの性質を
調べることが不可欠です。しかし、近年成果をあげている JWST などの可視・近赤外線望遠鏡では、電
離ガス注5)や星そのものは見えても、冷たい中性ガスを直接捉えることはできません。観測にはアルマ望
遠鏡のような電波望遠鏡が必要ですが、初期宇宙の銀河に対して直接観測を行った例は極めて稀でした。
■研究成果のポイント
・初期宇宙の銀河から「星の材料」の直接観測に成功:アルマ望遠鏡を用いて、宇宙誕生から約7億〜8
億年後の星形成銀河4天体(REBELS-38、A1689-zD1、REBELS-25、REBELS-18)から、星の直接の材
料となる中性ガスの存在を示す輝線「[O I] 145μm」を検出しました。同輝線は初期宇宙の星形成銀河で
は観測例がなく、典型的な星形成銀河としては最遠方での検出例です。
・初期宇宙の銀河は「星の材料が豊富に詰まった」星形成の現場だった:複数の輝線観測を組み合わせた
解析により、これらの銀河は現在のスターバースト銀河並みに高密度の中性ガスを持つことが分かりま
した。さらに、JWSTによる酸素組成比の測定結果と組み合わせることで、中性ガス質量の直接推定にも
成功しました。
・広く使われてきた輝線「[C II] 158μm注6)」の「正体」を確認:本研究では、電離ガス由来の[N II] 205μm
注7)輝線も観測し、複数の遠赤外線輝線を比較解析しました。これまで広く観測されてきた別の輝線([C II]
158 ㎛) は、中性ガスと電離ガスの両方から放射されうるため、その主な起源には曖昧さが残っていまし
た。今回の観測との比較から、主に中性ガスから放射されていることを初めて直接検証することに成功
しました。これにより、蓄積されてきた[C II]観測データを中性ガスの研究に活かす道を開きました。
■今後の展望
先進科学センター
特任助教 札本佳伸
今回の観測により、初期宇宙の銀河からも中性酸素の輝線が有効に観測できることがは
じめて分かりました。また「星の材料」の研究に活かせることを確認できたことにより、
宇宙の研究へ新たな扉を開くことができました。今後、より多くの銀河を対象に観測を行
い、宇宙が始まった直後の銀河における星形成の全体像を明らかにしたいと考えていま
す。また、JWSTなど他の望遠鏡と組み合わせることで、銀河を多角的に捉え、宇宙が
始まって今に至るまでどのようにして銀河が生まれ育ってきたのかを解明できると期待しています。