仮想の川を再現した環境で、水音の高さと位置を調整するだけで、手が水流に逆らう「抵抗感」が得られることを示しました。このとき、手に感じる「抵抗感」と「動かしやすさ」では音の効果が異なる可能性があります。視覚に頼らず、空間の境界や障害物の存在を音で伝える技術への応用が期待されます。
仮想現実(VR)や拡張現実(AR)では、目で見える情報が大きな役割を持つため、視覚に障害のある人でも使いやすい仕組みをつくることが重要です。これまで、実際に触れずに「手ごたえ」や「重さ」を錯覚させる研究では、映像をずらすなど視覚を使う方法が多く、音のみを使った方法は十分に検討されていませんでした。
本研究では、川の中に手を入れて左右に動かす場面を音だけで再現し、音の「高さ」と「聞こえる位置」を変えたときの、手の動かしやすさの感じ方の変化を調べました。参加者に目隠しをした状態で、スマートフォンのカメラで手の動きを計測し、ヘッドフォンから流れる音を聞かせながら複数の条件を体験し、どのようなときにより動かしやすいと感じたかを調査しました。
実験の結果、物理的な力を一切加えず、音の変化のみによって、水流に逆らうような抵抗感を知覚できることが分かりました。特に音の高さを高くする変化が最も効果的で、これに合わせて音が聞こえる位置を手の位置からずらすと抵抗感が強まることが分かりました。一方で、音の高さを下げたり位置を先行させたりしても「動きを後押しされる感覚」は生じにくく、「抵抗感」と「動かしやすさ」では音の効果が異なる可能性が示されました。
本成果は、視覚障害者に対して、音で仮想空間の境界や障害物の存在・接近などを「抵抗感」として知らせる技術への応用が考えられます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学システム情報系
善甫 啓一 准教授
掲載論文
- 【題名】
- Hand-in-River: Design of Direction-Dependent Virtual Cues of Assistive/Resistive Force via Auditory Displacement and Pitch Variation
(Hand-in-River: 聴覚変位と音高変化による方向依存的な仮想アシスト・抵抗力覚キューの設計) - 【掲載誌】
- Applied Acoustics
- 【DOI】
- 10.1016/j.apacoust.2026.111579
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