イモリの網膜再生とヒトの外傷性網膜疾患の接点を解明 ~ナチュラルな体細胞リプログラミングを単一細胞レベルで証明~

代表者 : 千葉 親文  丸尾 文昭  

国立大学法人筑波大学生命環境系千葉親文准教授と大学院生Md. Rafiqul Islam(生命環境科学研究科博士後期課程3年)は、筑波大学生命環境系丸尾文昭助教、中村研太研究員、および国立大学法人宇都宮大学大学院工学研究科外山史准教授らと共同で、独自に開発したアカハライモリの資源・技術・情報基盤を駆使することで、成体イモリにおける網膜再生の初期過程を高い分解能で解析することに成功しました。これにより、イモリにおけるナチュラルな体細胞リプログラミングを単一細胞レベルで実証するとともに、成体イモリの網膜再生過程がユニークで完璧なメカニズムに支えられていることを明らかにしました。

 

図.成体イモリRPE細胞のリプログラミング。麻酔した成体イモリの左眼球から神経性網膜を外科的に取り除き、10日間飼育しました。その後、右眼球(正常眼球;day-0)と左眼球(day-10)からRPE細胞を単離しました。正常なRPE細胞は、基底膜に接着している側(basal)に核をふくむ色素のない細胞体をもち、神経性網膜と接する側(apical)にメラニン色素を含む微絨毛をもつという形態的特徴があります。この特徴をもとにRPE細胞を同定し採取しました。day-10には再生の進み具合が異なるRPE細胞が含まれることが予想されましたので、細胞のステージをそろえるため、もともとの形態を未だ示すRPE細胞(出遅れたRPE細胞)のフラクションのみを採取しました。これらの細胞を100個集めて、あるいは1個だけで定量PCRを行いました(グラフ)。細胞1個の解析では、マーカー遺伝子であるRPE65を、細胞の同定とサンプルの品質評価にもちいました。これらの解析の結果、成体イモリのRPE細胞が形態的特徴やRPE65遺伝子の発現を失うことなく、多能性因子(c-MycKlf4Sox2)やMitfPax6を新たに発現することが明らかになりました。