前田修助教の派遣先での研究状況レポート(12月)が公開されました

代表者 : 前田 修  

ICRの国際テニュアトラック助教である前田修助教の2015年12月の研究状況をご紹介いたします。

 

2014年11月から1年間、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)においてドリアン・フラー教授らとの共同研究をおこなってきました。現在、研究の第一段階を終え、イギリスのビザが切れる事情もあって、2015年11月から一時帰国中です。2016年2月からは、イギリス・マンチェスター大学で新たに共同研究を立ち上げる計画ですが、それまでの3ヶ月間は筑波大学において研究を継続しています。

フラー教授との共同研究は共著論文として投稿済みであり、現在査読を受けている状況です。さらにそのフォローアップ論文として次の共著論文の準備を進めています。今後、3本の論考を共著で執筆することを計画しています。また、10月にはウィーンのAustrian Academy of Scienceの一組織であるInstitut für Orientalische und Europäische Archäologie (OREA)にて講演をおこない、その際に、研究所長のバーバラ・ホレジュス教授と、将来的に共同研究を開始する見通しについて話し合いを持ちました。この他、イギリス、レディング大学のロジャー・マシュー教授とも共同研究を進行中であり、多方面と複数の共同研究を同時に進行させる戦略をもって研究を進めています。

昨今、イギリスの大学においても人文学分野の業績評価が一段と厳しくなっており、数値的に評価され得る業績を効率的にあげることが求められています。過度の業績重視は本来的な学問の意義からは外れるところも多く、批判も少なくありません。しかしながら、研究の評価が学内の予算や人事の配分に直接影響してくる現状は世界的な傾向であり、抗うことは難しいといえます。こうした中で、個々の研究者としては、文理を問わずに数値的に評価される業績の向上と、本来の専門分野内での研究評価の向上を両立させていく必要があり、そのためには、幅広い国際共同研究のネットワークを構築し、単なる研究協力ではなく共著論文の執筆を念頭に置いた共同研究を数多く進めていくことが有効であると実感しています。人文系の学問は、必ずしも1つのラボに張りついて研究をしなければならないものではありません。複数の研究グループに所属し、国際的、学際的な研究を進めることに今後の人文学研究の活路を見出すことを見据えています。