2015/08/19
研究成果のポイント
1. トランスクリプトームおよびメタボローム解析により、マメ科植物の糸状菌病害に対する非宿主抵抗性において、クロロフィル異化産物および二次代謝産物であるイソフラボノイドが重要な役割を担うことを明らかにしました。
2. イソフラボノイドが糸状菌病害であるダイズさび病菌の感染行動を著しく阻害することを明らかにしました。
3. 省資源型食料生産に向けた基盤技術の開発と、環境と調和した持続可能な農業活動の実現に貢献しうる研究成果です。
概要
筑波大学生命環境系石賀康博助教および米国 The Samuel Roberts Noble Foundation研究所 Dr. Kiran Mysoreらの研究グループは、植物が自らを宿主としない病原菌に対して保持する極めて強固な抵抗性である非宿主抵抗性の分子機構の解明を試みました。分子機構の解明にあたっては、遺伝子発現と代謝産物の変化を網羅的にモニタリングすることが可能なトランスクリプトーム解析とメタボローム解析を用いました。
具体的には、病原糸状菌であるダイズさび病菌が感染したマメ科のモデル植物タルウマゴヤシにおける遺伝子発現と代謝産物の変化を解析しました。その結果、クロロフィル異化産物および二次代謝産物であるイソフラボノイドに関連した遺伝子および代謝産物で菌感染による顕著な変化が認められました。さらに、イソフラボノイドの1つであるファイトアレキシンメディカーピンが、ダイズさび病菌の感染行動を著しく阻害することを明らかにしました。
植物の非宿主抵抗性の分子メカニズムには不明な点が多く存在します。本研究の結果から、農薬の使用を抑えた省資源型食料生産に向けた基盤技術の開発と、環境と調和した持続可能な農業活動の実現に貢献できればと考えています。
この成果は、Scientific Reports誌に2015年8月2日付けでオンライン掲載されました。(doi:10.1038/srep13061)
図 ファイトアレキシンメディカーピンによるダイズさび病菌の感染行動の抑制
*本研究は、科学技術振興機構が助成するテニュアトラック普及・定着事業によって実施されました。
問合せ先
石賀 康博(いしが やすひろ)
筑波大学 生命環境系 助教