代表者 : 守友 浩
2015/10/20
筑波大学 数理物質系 守友浩教授の研究グループは、成膜条件の異なる薄膜電極を用いた精密実験により、ナトリウムイオンの拡散がナトリウムイオン二次電池の容量の大きさを決める主な要因であることを発見しました。イオンの拡散係数を大きくすることにより、高電流密度二次電池の実現が期待されます。
実用化されている二次電池の電極では、イオンを出し入れする正極材料に加え、伝導性を高める炭素系導電材とAl箔集電極に接合させる高分子バインダーが混合されています。そのため、電圧分布や界面状態が複雑となり、電池容量が電流密度に依存するメカニズムはよくわかっていませんでした。本研究グループは正極材料に焦点を当て、混合物を含まず、成膜条件の異なる薄膜電極を用いた精密実験を行いました。薄膜電極では、全ての正極材料粒子に電圧が印加されます。その結果、電池容量が繰り込まれた電流密度に相関することを見出しました。さらに、イオンの二次元拡散を仮定することにより、上記の経験則を定量的に再現できました。つまり、イオンの拡散が電池容量の支配要因、であることの実験的証拠を捉えました。
図 電流密度とイオン拡散との関係。赤丸がイオン。電流密度が小さい場合には、イオンが電極粒子の内側に拡散する時間が充分にある。電流密度が大きい場合には、イオンが電極粒子の内側に拡散する時間がない。