耐久性劣化の原因解明 実用化へ一歩近づく

代表者 : 丸本 一弘  

地球温暖化や、原子力発電の安全性が問題となる中、注目を浴びているのが「クリーンエネルギー」だ。その一つである太陽電池は、東日本大震災を機に一般住宅への設置が進められている。だが現在主流のシリコン系太陽電池は高価で、シリコンの確保が難しいなど問題が多い。これに対し丸本一弘准教授(数物系)は2月、低コストで次世代型として期待される「高分子太陽電池」の実用化に一歩近づく成果を発表した。
 高分子太陽電池はシリコン系太陽電池よりも軽く、半分のコストで製作できるが、耐久性がシリコン系太陽電池の10分の1である上、光を電気に変換する効率が半分しかないという問題もある。
 だが今回丸本准教授は高分子太陽電池の耐久性低下の原因の特定に成功。光の変換効率の向上につながる可能性も出てきた。
 高分子太陽電池は光を当てると電池の性能が劣化することが知られていた。これは電池内に電気が蓄積され、電流が流れにくくなるためだと考えられていたが従来の手法では証明できない上、電気が蓄積する場所も特定できなかった。
 今回丸本准教授は電池を発電させながら、劣化の過程を高精度で観察できる手法を使用。この結果、光を当てる時間が増えるに従い、電池内に電気が蓄積され、同時に性能が劣化することを初めて確認した。また電池内で電気を生み出す機能を持つ「混合膜」に電気がたまり、外部に電気を送り出す「電気取り出し口」まで到達していないことが分かった。
 これらの結果から今後は混合膜の材料に他の物質を使うことで、電気を電池内にためず、「電気取り出し口」まで移動しやすくすることへの道筋が見えてきた。これが実現すれば、電池の耐久性向上だけでなく、光の変換効率も上がると見られる。
 丸本准教授によると過去、電池内にたまる電気を高精度で観察することは難しかったが、電池の配線や電極を薄く細くするなど、観察しやすい電池の環境を作る工夫をし、これを可能にした。
観察を容易にするために「一つひとつ(配線などの)材料を厳選することに一番苦労した」と話す。 丸本准教授が太陽電池の研究を始めたきっかけは名古屋大学での助手時代。「あまりに名古屋が暑く、この(太陽の)エネルギーがもったいない、なんとか生かせないか」と考えたことが今回の成果につながった。
 今回の研究で次世代型太陽電池が流通し、原子力発電に代わる安全でクリーンな発電源として、日本の未来を照らすようになるかもしれない。(中島佳奈=人文学類3年)
◆太陽電池=太陽の光エネルギーを直接電気に変換する発電装置。現在主流の「シリGPAに縛られない履修を耐久性劣化の原因解明太陽電池実用化へ一歩近づくコン系」は、自然界にあるケイ石で作ったシリコンを使用。光を電気に変換する効率が高いが、コストが高い。一方、「高分子太陽電池」は、プラスチック製の薄いフィルムを用いて作る。コストが低く、柔らかく、軽量だが、劣化しやすく実用化には至っていない