「楽しみ」で運動が長続き 集中力や判断力も上昇

代表者 : 征矢 英昭  

 健康のために運動をしようと考えている人は多い。ランニング、ジム通い、筋トレ……。だが、「明日からやろう」と思って結局やらなかったり、「三日坊主」で終わってしまうことも多い。
 この問題の解決を目指すのが、征矢英昭教授(体育系)の「BAMISプロジェクト」だ。BAMISとはBody And Mind Integrated Sciencesの略で、日本語では「たくましい心を育むスポーツ科学イノベーション」。2010年から今年2月まで続けたプロジェクトで、運動を最先端の脳科学によって研究し、いつまでも続けられるような運動のプログラム開発・応用を目指している。
 征矢教授によると、そもそも、運動をしようと思っても長続きしないのは、人に言われたからなど、義務感によって運動するためだ。また、運動不足の人が急に激しいトレーニングをしても、きつくて長く続かない。

 運動を長続きさせる最も重要な要素は、「楽しみ」(征矢教授)だ。健康目的だけで運動すれば飽きるが、自分から積極的に楽しめる運動ならば続けることができる。「好きな仲間とやったり、音楽を聞きながら運動したりと、快適な環境を作ることが重要」と征矢教授は語る。
 征矢教授の研究によると、軽い運動を10分ほど行うと、脳で注意力や集中力、判断能力(認知機能)をつかさどる背外側前頭前野が活性化する。例えば勉強の前にウォーミングアップをすれ、集中して机に向き合い、計算が速くなるなど効率がよくなる。そして「楽しみ」はここでも大きく影響する。好きな音楽を聞きながら運動すると、更に効果が向上するのだ。楽しみながら運動することは健康だけでなく、生活の質の向上にもつながる。
 激しい運動をしないと健康を保てないという固定観念が、運動を続ける上でのハードルになる場合もあるが、征矢教授は「長時間の激しい運動は疲労が激しくむしろ逆効果。楽な運動にも大きな価値がある」と言う。征矢教授は、歩行程度の運動を2~4週間続けることで、脳で記憶をつかさどる海馬が活性化し、認知機能である記憶力や理解力が向上することも発見した。

 征矢教授の今後の目標は「誰もが気軽に運動をしようと思うようになること」。東京オリンピック・パラリンピック開催まであと6年。運動への関心が高まる中で、「楽」を基にした征矢教授の研究が国民の運動の在り方を変えるかもしれない。(森脇慎=社会学類2年、イラスト=島田文、芸術専門学群4年)