発展する都市「つくば」のヒートアイランドの現在と将来:60年後の夏は2010年猛暑並?(科研費NEWS_2013_vol.1)

代表者 : 日下 博幸  

発展する都市「つくば」のヒートアイランドの現在と将来:60年後の夏は2010年猛暑並?(科研費NEWS_2013_vol.1)

筑波大学 計算科学研究センター 准教授 日下 博幸

研究の背景

 近年、熱中症患者数の増加に見られるように都市の熱 環境の悪化が懸念されています。長期的な気温上昇の原 因が地球温暖化と都市化であるなら、ヒートアイランドを緩和 することにより、その地域の熱環境の悪化を緩和できるかも しれません。逆に、都市の発展の仕方次第では、将来の熱 環境は予想以上に悪化する可能性もあります。  この研究をはじめる少し前に小型で安価な気温観測シス テムが開発されました。また、勤務地である茨城県つくば市 は、「つくばエクスプレス」の開通により第二の発展期を迎え ていました。そこで、もし、つくば市で空間詳細な気温観測を 長期間行えば、都市の発展による影響を長期的な地球温 暖化の影響から切り分けて評価することができるのではな いかと思われます。また、得られたデータは、都市気候の将 来予測を行う際のモデルとして使え、20年後や50年後に貴 重な資料となるなど、一石二鳥以上の研究になると考えら れます。

研究の成果

 本研究では、つくば市を対象に詳細な気温観測を実施し、 現在までの都市化に伴う気温上昇量を推定しました。さらに は、全球気候モデルによって予測された将来の気候データ を都市気候モデルに入力し、つくば市の夏の気候の将来 予測を行いました。その結果、以下のことがわかりました。 (1)つくば市の中心部はその郊外に比べ高温であること (図1)。(2010年1月平均気温で見た場合、都市は郊 外よりも1℃高く、8月平均気温で見た場合は0.4℃高 い) (2)2070年代になるとつくば市の8月平均気温は2.3℃程 度上昇し、標準的な夏でも、記録的な猛暑年となった 2010年(28.2℃)と同程度の暑さになり得ること(図2)。

今後の展望

 つくば市は都市化の影響が出やすい地形環境にあり、 観測を行った2010年は猛暑で都市効果が出やすい年でし た。そのため、中規模都市における平均的な都市効果は もっと小さいと思われます。しかし、小さくても無視できない影 響が出る可能性があり、このことは、熱環境の将来予測をす る際に都市の発展性を考慮した方が良いこと、都市化によるヒートアイランドの緩和策が将来の熱環境悪化の緩和にそ れなりに有効となり得ることを示唆しています。  今後も観測を続けて行く予定です。同時に、都市気候モ デルを用いて、将来の猛暑日がどうなるかなどの課題にも取 り組みたいと思っています。

関連する科研費

平成20-22年度 若手研究(B)「発展する都市つくばの ヒートアイランドの実態と要因解明」