代表者 : 伊藤 良一
筑波大学数理物質系 伊藤良一准教授は、同大学院数理物質研究科 胡凱龍(博士後期課程2年生)、大阪大学大学院基礎工学研究科 大戸達彦助教らと協力して、水の電気分解において、酸性条件下でも腐食しない卑金属電極を開発しました。
従来用いられている白金電極は、コストや希少性の点から代替品の開発が課題となっています。しかしながら、卑金属は、コストや潜在的な電極性能には優れているものの、酸性条件下ですぐに腐食してしまうという問題があり、腐食防止と電極性能を両立させることは困難でした。
本研究グループは、ニッケルモリブデン卑金属多孔質合金の表面を、炭素原子3~5層の非常に薄いグラフェン膜で覆うことにより、酸性条件下でも腐食から保護し、同時に電極性能を保持できることを明らかにしました。この卑金属電極は、水の電気分解において、実用化に必要な性能値である、単位面積当たり0.2Aの電流値を1週間保持することに世界で初めて成功しました。
図 グラフェン膜で覆ったニッケルモリブデンナノ粒子/多孔質グラフェン電極の電子顕微鏡像。
(a)グラフェン膜で覆ったニッケルモリブデンナノ粒子/多孔質グラフェン電極の全体図。
(b)グラフェン膜で覆ったニッケルモリブデンナノ粒子/多孔質グラフェン電極の表面を拡大し、1層のグラフェン膜で覆われたニッケルモリブデンナノ粒子が多孔質グラフェンの上に張り付いている様子。