研究成果のポイント
1. 新たに達成したこと:協同開発教科書がインドネシア・チリの小中学校に全国配布、使用開始
筑波大学教育開発国際協力研究センター (CRICED)の礒田正美センター長(人間系教授)は、2017年にインドネシア教育文化省と算数・数学教科書の協同開発を開始し、この度インドネシア政府は、小学1年生~中学3年生までの教科書全15冊を発行しました。発行された教科書は7月にインドネシア国内全域に配布され、教員研修を通して小・中学校で活用されます。
2019 年には、礒田センター長はチリ教育省と小学校1年生~6年生の協同開発を開始し、この度チリ政府は、小学校1, 2年生用教科書を発行し、チリ全域で配布並びにその使用を開始しました。
2.研究開発の新規性やブレークスルー:相手国政府による21世紀型日本型教育の全国展開
今回の教科書開発は、生活・仕事で生きる問題解決カ・思考力(21世紀型スキル、コンピテンシー;資質・能力)を評価する国際数学学力調査PISAの達成度で下位に位置する両国が、学力改善を実現する切り札として日本の高質教育を象徴する日本の算数・数学教科書に注目し、その領域で世界的に知られるCRICEDとの協同開発を求めて実現しました。
JICA教育プロジェクトは、日本の政府開発援助ODA経費によって最貧国限定で実施されています。それに対して、CRICED は、新興国・先進国から協同研究開発相手として直接指名され、相手国政府経費による相手国内全域・全校実施体制の下で、日本型教育の世界展開を実現しました。
3 . 成果の意義:日本の教師が築いた日本の教育学を担う筑波大学による海外展開
筑波大学は、教育学における国際学術協同研究の世界的中核機関としての機能を備えています。
成果の意義、特に公益性は、日本の学校の先生方と大学の研究者が 築いてきた21世紀型スキル、資質・能力を育てる教科書、教科書開発のための内容論・方法論が、新興国や先進国で活用され、世界の 教育の質改善に寄与することです。特に今回は、人口世界4位で東南アジア中核国であるインドネシアと中南米の模範国チリで役立てられ、東南アジア、APECを介して域内教育改善に寄与します。。CRICEDは、両国の子どもたちと先生方が、日本型教育モデルで学び、自国の教育を改革・改善していくことに寄与します。発見された日本型教育のよさは、日本の教育や学生の海外実習でも役立てられます。
成果の学術的意義は、「自ら学び自ら考える」子どもを育てることに長けた日本の学校教育学の国際通用性が確認され、海外各国が、日本の教育学研究の成果(内容論・方法論)を自国経費で参照しその 成果が国家レベルで示されたことです。本学をはじめとする国内研究者は、両国で発行された教科書を前提に、「自ら学び自ら考える子ども」を育てる国際協同研究を各国で実施します。
※「協同開発」とは、筑波大学附属小学校の先生方が執筆した学校図書発行検定教科書を、現地に即して編纂しなおすことです。
※「使用する」とは、政府が、全国の学校に向けて教科書を発行し生徒に普及する状況が作られ、教員研修を行うという意味です。