代表者 : 尾崎 遼
2020/05/12
ウイルスが宿主細胞内で増殖して病原性等を発揮するためには、ウイルスのRNA分子が宿主細胞内で安定に存在することが必要です。しかしながら細胞の中でウイルスRNA分子の安定化を引き起こすRNA配列(ウイルスRNA分子全体のなかで、RNAの安定化を決める部分)を迅速かつ大規模に調べる方法はありませんでした。東京大学 秋光教授らと筑波大学 尾崎准教授らの合同研究チームは、多数種類のウイルス由来RNA配列の安定化活性を迅速かつ網羅的に調べる新技術を開発しました。まず、SARSコロナウイルス(SARS-CoV)のRNA配列を解析しました。すると、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含むコロナウイルス属内で進化的に保存されることになり、その結果、重要と思われ、かつ、RNA安定化活性の高い配列を発見しました。さらに、これらのRNA配列の形(RNA二次構造)の予測を行いました。この研究は、ヒト細胞で新型コロナウイルスが増殖する仕組みを解明するための重要な情報になると思われます。さらに、今後、合同研究チームはウイルスRNA配列情報を利用した核酸医薬の開発基盤を整備する計画です。
図 ウイルス由来RNA配列の安定化活性を調べる新技術「Fate-seq」の概念図