大規模データの保護・流通・利活用において知的財産法が果たす役割 | 潮海 久雄 | 筑波大学研究者カタログ

代表者 : 潮海 久雄  

Keyword

大規模データ、知的財産法、特許法、著作権法、商標法、不正競争防止法

研究テーマ

  • 大規模データの保護・流通・利活用において知的財産法が果たす役割

研究ハイライト

これまで伝統的な知的財産法は、個別の知的財産(発明、著作物、営業秘密、商標など)を規律することを念頭において制定され、解釈されてきた。しかし、現代では、多くの知的財産が大規模データとして保護・流通・利活用が図られており、その実態に適合する法解釈論・立法論が求められている。

以上の問題意識から、本研究は、伝統的な知的財産法の考え方や枠組みを大規模データの実態にあわせてどのように変容させるべきかを探求することを目的とし、その経済・技術の実態を調査するとともに、関連する法分野(個人情報保護法、情報法、競争法、民法など)や比較法の知見を援用しつつ、知的財産法の領域を横断した法理論研究をおこなっている。

1)ポートフォリオで権利行使される標準必須特許の権利行使について、比較法をもとに、特許法や契約法の視点だけでなく競争法の視点から分析

2)プロバイダやプラットフォーム(電子商取引)において大規模になされる著作権侵害や商標権侵害について媒介者がどのような責任を負うかを、わが国の裁判例だけでなく比較法の観点から法理論的に検討

3)営業秘密(データを含む)の侵害行為の多様化に対して各国はどのような法律構成で規整し、救済(差止請求等)がどのように柔軟化されているかを分析

4)大規模データとしての著作物の著作権の制限規定が個別制限規定ではなく一般的制限規定(フェアユース)であるべき根拠を、比較法、およびAIに用いられる大規模データやAIにより創作される著作物に着目して論証

5)ソフトウェアよりもデータにその技術的特徴があるAI関連発明について、その明細書をその技術的特徴に応じて類型化した上で、進歩性要件、記載要件(開示要件)などの特許要件を検討し、従来の法解釈における問題点を検証

研究の応用・展望

  • 標準必須特許の権利行使
  • 著作権・商標権侵害の媒介者の責任
  • AI関連発明における特許要件
  • 営業秘密の保護の多面性

文献・知財・作品

  • 「デジタル単一市場における著作権指令―オンライン上の媒介者の責任の視点から―」EU法研究9号103-132頁(信山社・2021年)
  • 「電子商取引における商標権侵害の責任主体」令和2年度知的財産に関する日中共同研究報告書日中交流(2021年4月)
  • 「IoT関連の標準必須特許の権利行使―競争法の視点から-」AIPPI65巻8号2-31頁(2020年)
  • 「行為規整の変容と侵害・救済の柔軟化の必要性―営業秘密の侵害行為の多様性の視点から」『L&T別冊 知的財産紛争の最前線No.6』61-73頁(2020年)
  • 「特許法における進歩性要件の現代的課題―AI関連発明を中心に-」特許研究70号25-50頁(2020年)
  • 「AI関連発明における特許要件」AIPPI64巻7号10-23頁(2019年)(中島裕美氏との共著)
  • 「スリーステップテストからフェアユースへの著作権制限規定の変容―機械学習(AI)における情報解析規定の批判的検討―」民商法雑誌155巻4号679-722頁(2019年)

 

80304567

https://orcid.org/0000-0001-6374-3010

ビジネスサイエンス系

Faculty of Business Sciences

Collaborators: