数量解析で探るノーベル賞級の知の創出プロセスの特徴

代表者 : 大庭 良介  

学術研究の世界では、日々、新たな知(萌芽的トピック)が論文として発表されていますが、その中で、大きなインパクトを残し、ノーベル賞やイノベーションへとつながるものは限られています。本研究では、生命科学・医学系最大級の文献データベースPubMedの全論文を対象に、過去半世紀に渡る萌芽的トピック創出の特徴と、その発展における研究者の関わり方を、数量的に解析しました。

その結果、萌芽的トピックを持つ論文の創出に先立って、関連トピックの継続的論文発表が重要であること、また一方で、ノーベル賞級トピックは、事前の関連論文発表を介さずに、突然発表される傾向が強いことが明らかとなりました。このことは、研究費投資の評価指標として過去の業績を用いることが、萌芽的トピック創出には一定の有効性があるものの、ノーベル賞級研究成果の創出には有効ではないことを示唆しています。

また、萌芽的トピック創出後の研究者の寄与の在り方として、1990年代半ばまでは、一旦創出された萌芽的トピックの発展が、別の研究者や研究グループの参入によって担われていましたが、2000年以降、そのトピックを発表した研究者が継続的に研究を行う傾向が顕著になっています。すなわち、トピック外の研究者の参入障壁が大きくなっている、もしくは、萌芽したトピックが、他の研究者にとっては魅力的ではなくなっている可能性があります。

本研究成果は、生命科学・医学分野において、投資に対して期待したイノベーション等のリターンが得られにくいことの原因の一端を表していると考えられます。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学医学医療系
大庭 良介 准教授