代表者 : 秋山 肇
2020年以降のCOVID-19の感染拡大は、自由や人権をめぐるさまざまな問題を通じて、公衆衛生が人権保障の基盤になっていることを再確認させました。公衆衛生を環境問題の一つと捉えれば、環境が人権保障の基盤であることが明らかになったとも言えます。しかしながら、従来の法学や憲法学は人間の権利義務関係を規定することに主眼を置いており、環境と憲法の関連性については、あまり議論がなされていません。今日、環境により人間の生存が危機に晒される「人新世」といわれる時代において、人権保障のための憲法の役割を明らかにする必要があります。
本研究ではまず、他国や国際人権法における議論を参照しつつ、生命権(憲法13条:生命を奪われない権利)の自由権的側面(国家からの自由)と社会権的側面(国家による自由)および生存権(同25条:人間的な生活を送る権利)を検討しました。そして環境問題のリスクが認知されている今日では、国家の積極的義務を認め、生存権と関連する生命権の社会権的側面を保障する必要があると論じます。さらに、生命権および生存権の実質的な意味を踏まえた上で、これらの権利に対して、これまで一般的に認められていなかった具体的請求権を認めるべきであると結論付けました。
今後さらに、科学的知見からどのような具体的な環境問題対策および感染症対策が必要であるのかを議論する必要があります。加えて、環境を視野に入れた新たな発想で、人新世における「人権」や「権利」について構想することが重要だと考えられます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学人文社会系
秋山 肇 助教