VRによる学習では触覚やコミュニケーションに関わる技能習得が不十分

代表者 : 黒田 嘉宏  

VR(仮想現実)技術は、仮想空間上でさまざまな場面をリアルに体験できることから、ゲームやビジネスへの応用が活発になっています。医療分野でも同様に、医師が行う手術のシミュレーションや医療従事者への技術教育の場面において、その活用が検討されています。特に、放射線を使った高度な医療機器を扱う診療放射線技師の教育においては、被ばくすることなく訓練が行えるVR教育システムは、有用性が高いと考えられています。しかしながら、VR技術は発展途上であり、教育現場での活用にはさまざまな課題があると考えられます。

本研究では、診療放射線技師の学習にVR教育システムを活用し、学習に与える影響を評価しました。その結果、従来の学習法と同等の学習効果が得られた技能項目がある一方で、とりわけ、触覚やコミュニケーションを必要とする一部の技能項目の習熟度は、有意に低下することが明らかになりました。また、自己学習においては、一部の項目で、習熟度の自己評価が有意に高くなる(過大評価する)ことが分かりました。

本研究により、VR技術の課題について理解し、より効果的なVR教育システムを構築する必要性が示されました。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学システム情報系
黒田 嘉宏 教授
加藤 健吾(理工情報生命学術院 博士後期課程2年)

掲載論文
【題名】 Radiography education with VR using head mounted display: proficiency evaluation by rubric method.
(ヘッドマウントディスプレイを用いた診療放射線技師に対するVR教育:ルーブリック評価法による習熟度評価) 【掲載誌】 BMC Medical Education 【DOI】 10.1186/s12909-022-03645-8