在宅で訪問診療を受けている非がん高齢者が、どのような症状で困っているかということを、1年間にわたって調査しました。その結果、体の動かしにくさ、だるさ、食欲不振が主な苦痛症状であり、訪問診療を受けていても、それらの症状は十分に緩和されていないことが分かりました。
我が国における死亡者数の約70%は非がん患者です。非がん患者は、がん患者と比べて苦痛症状の頻度が多いことや、がん患者とは異なる苦痛症状で困っている可能性が指摘されています。世界保健機関(WHO)も、非がん高齢者に対して質の高い緩和ケアを提供することが必要であり、各国での非がん患者に対する緩和ケアの普及・啓発を推奨しています。しかし、非がん高齢者が、具体的に、どのような苦痛症状で困っているかということについては明らかになっていませんでした。そこで本研究では、訪問診療を受けている非がん高齢者が困っている苦痛症状を1年間にわたって調査し、苦痛症状の頻度や変化について、検証を行いました。
その結果、訪問診療を開始した時点では、体の動かしにくさ、だるさに困っている人が多く、この傾向は1年間変わりませんでした。また、食欲不振に困っている人も多いものの、訪問診療を開始して3か月以降は、その割合は少なくなる傾向が分かりました。そして、がん患者では多く見られる、痛みや呼吸困難の頻度は、あまり多くないことも明らかになりました。
本研究では、訪問診療による医療やケアが、どのように症状に影響したかということが考慮されていないため、訪問診療を受けても苦痛症状が緩和されないとは言えませんが、今回得られた知見は、在宅で過ごす非がん高齢者にも、苦痛症状を緩和するための治療やケア、支援が必要であることを示していると考えられます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学医学医療系
濵野 淳 講師
掲載論文
【題名】 Unresolved Palliative Care Needs of Elderly Non-Cancer Patients at Home: A Multicenter Prospective Study.
(在宅非がん高齢者の苦痛症状の実態) 【掲載誌】 Journal of Primary Care & Community Health 【DOI】 10.1177/21501319231221431