eスポーツを含むオンラインコミュニケーションツールは、人と人との距離を縮めることが期待されるものの、往々にしてうまくいかないこともあります。本研究では、オンラインゲーム時にプレーヤー同士が心拍数などの生体信号を共有すると「共にプレーした感覚」が高まることを見いだしました。
オンラインコミュニケーションツールには、物理的距離が離れた人々の心理的距離を近づける効果も期待されます。しかしながら、そのような効果が得られないことも少なくありません。その原因として社会的存在感、すなわち「一緒に居る」という感覚が欠けがちであることが挙げられます。
心拍数や精神発汗(手汗)などの生体信号は、意図せずとも、その人の状態について多くのことを教えてくれます。例えば、心拍数は、興奮したり不安を感じたりすると上昇し、リラックスすると落ち着きます。対面のコミュニケーションでは、これらを意識的・無意識的にやりとりすることで、社会的存在感や共存感が形成されます。しかしながら、オンラインコミュニケーションでは、これらのやりとりが少なくなり、社会的存在感が形成されにくいのです。
本研究では、「BioShare(バイオ・シェア)」と名づけたリアルタイム生体信号共有プラットフォームを開発し、生体信号の視覚的共有が互いに面識のない人同士によるオンラインゲーム時の社会的存在感に及ぼす効果を検討しました。その結果、プレーヤーの心拍数を、特に顔と同時に表示すると、互いの視線を十分に引きつけることが分かりました。この際、相手の心拍数と顔の動画を同時に見ることで、社会的存在感が対面プレーとほぼ同等のレベルにまで高まりました。
この成果は、他者との心理的距離を近づける次世代的なオンラインコミュニケーション形態の開発に対して具体的な方策を提供するものです。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学体育系
松井 崇 助教
筑波大学システム情報系
Modar Hassan 助教
掲載論文
【題名】 Augmenting the Sense of Social Presence in Online Video Games Through the Sharing of Biosignals 【掲載誌】 IEEE Access 【DOI】 10.1109/ACCESS.2024.3429247