多様な教育的ニーズに対応できる教育システム・プロセスとしてのインクルーシブ教育IEの実施が世界共通の課題となっています(UNESCO,2015)。開発途上国では独自の特殊教育や統合教育の実践とその成果が十分蓄積されないままに、IEが海外から導入されたことで、障害のある子のみならず、障害のない子にとっても、十分に質の保証がなされないままに教育が実施されています。先進諸国では、長きにわたる分離的教育資源(特別学校)の教育成果の蓄積を科学研究のエビデンスとして再定義し、インクルーシブ教育の実践に転用し、かつ成果の継承発展を持続していなかければならないという課題に直面しています。そのような中でわが国は、インクルージョン学校としての小中高等学校等の位置づけを明確にし、インクルージョン学校で提供される個のニーズに基づくアコモデーションの立案・実施や教員研修に際しては、特別支援学校が培ってきた知見と高度専門職能が貴重な資源となっており、インクルージョン学校と特別支援学校の両方を内包するインクルーシブ教育システムの構築を目指しています。このインクルーシブ教育システムの日本モデルの構築と成果の発信は、特別支援教育の開発途上国のみならず、先進国に対しても重要な提案となるものです。人間共生科学の一翼を担う障害科学の研究者組織と附属学校群を有する筑波大学は、インクルーシブ教育学の創成とその学問的実践的スタンダードの開発研究拠点として位置づけられます。本リサーチユニットは、以上のような問題意識に基づき、インクルーシブ教育カリキュラムスタンダードの開発及び「教育の質」保証のためのpre-service/in-service trainingスタンダードの開発を掲げました。国内外の関係組織(国立特別支援教育総合研究所、アメリカ合衆国・オハイオ州立大学、インドネシア教育大学等)との協働により、今後、課題解決を果たすものです。